◆=文書発表 ▲=国会活動

子ども手当のこれまでの流れ

■下記のように、政権交代のかなり前から、法案と一致しないマニフェストや、自己矛盾しているマニフェストなどが公表され続けていました。一方、条文内の、年齢と小中高の学歴を固定した表現は、法律可決の2ヶ月前にいきなり現れ、まさに不意打ちの形で滑り込みました。

◆2005年8月30日 2005年版マニフェスト発表

このマニフェストで初めて子ども手当の話が出てきました。対象については、「義務教育終了年齢までの子ども」と書いてあります。「中学卒業」との表記はありません。なお、このPDFファイルは中身を検索できないので作り方が良くありません。

▲2006年3月3日 児童手当法の一部を改正する法律案(2006年版旧法案)が衆議院に提出

この法案の別名が子ども手当法案です。条文で、「9歳の4月1日以後の児童」を、「小学校第三学年修了後の児童」と呼ぶと定義しています。中学校、高校については書かれていません。ただし同時発表の比較表には、「中学校修了までの児童」という表現があります。またプレスリリースには、「民主党案では義務教育が終わる中学校修了までに広げ」と書いてあります。衆議院で否決されました。

▲2006年3月22日 2006年版旧法案が参議院に提出

条文で、「9歳の4月1日以後の児童」を、「小学校第三学年修了後の児童」と呼ぶと定義しています。中学校、高校については書かれていません。ただし同時発表の比較表には、「中学校修了までの児童」という表現があります。またプレスリリースには、「民主党案では義務教育が終わる中学校修了までに広げ」と書いてあります。今回の法案は可決も否決もされませんでした。

◆2007年1月17日 政策インデックス2007発表

「義務教育修了までの子ども」と書いてあります。「中学卒業」との表記はありません。

◆2007年6月20日 重点政策50発表

「中学校卒業まで」と書いてあります。

◆2007年7月9日 2007年版マニフェスト発表

子ども手当について、同じページに「義務教育終了まで支給」と「中学校卒業まで支給」の表現が並存しています。一方、このマニフェストの別冊である生活篇では、「義務教育終了まで」のみで、「中学卒業」との表記はありません。

▲2007年12月26日 子ども手当法案(2007年版旧法案)が参議院に提出

条文には、小学校、中学校、高校のいずれも出てきません。ただし同時発表のプレスリリースには、「中学校修了までの子ども」との表現があります。今回の法案は可決も否決もされませんでした。

▲2008年4月22日 2007年版旧法案が参議院に提出

条文には、小学校、中学校、高校のいずれも出てきません。ただし同時発表のプレスリリースには、「中学校卒業までの子ども」との表現があります。今回の法案は可決も否決もされませんでした。

▲2008年12月11日 2007年版旧法案が参議院に提出

条文には、小学校、中学校、高校のいずれも出てきません。ただし同時発表のプレスリリースには、「中学校卒業までの子ども」との表現があります。今回の法案は可決も否決もされませんでした。

◆2009年7月27日 2009年版マニフェスト発表

「義務教育終了まで」との表現はありませんが、「中学卒業まで支給」と書いてあります。

●2009年9月 政権交代

子ども手当制度を掲げたことが、民主党を躍進させたといわれています。

▲2010年1月29日 平成二十二年度における子ども手当の支給に関する法律案(2010年度新法案)提出

「小学校修了=12歳、中学校修了=15歳、高等学校修了=18歳」の条文が加わりました。1年度限りの法律です。

▲2010年2月8日 国会で養護施設児童への不支給が問題化

この問題については、同等の交付金を支給することで対応されました。

▲2010年3月5日 国会で外国在住児童への支給が問題化

この問題は直されず、強行採決されました。なお、自民党の児童手当法時代にも、同様の規定はありました。

▲2010年3月 2010年度新法案可決

提出からわずか2ヶ月で、ついに現実のものとなりました。この間養護施設と外国在住児童の問題が持ち上がって、肝心の条文の人権問題は議論されませんでした。

◆2010年4月ごろ 各自治体が申請案内を開始

ここで申請が必要な対象者について不正な案内をして申請漏れを誘発する自治体が数多くあります。

◆2010年6月17日 2010年版マニフェスト発表

目立たない部分に「中学生以下の子ども」との表記があります。

▲2011年春 国会で2011年度以降の子ども手当法案が可決される予定

 

高校無償化のこれまでの流れ

■下記のように、長期間、年齢制限が付いた法案が公表されていましたが、マニフェストには書かれていませんでした。有権者の多くが年齢制限の存在を知らないまま、政権交代前に一度参議院で可決されています。その後、可決の2ヶ月前に出た新法案では、何の前触れもなく年齢制限は消滅していましたが、この件に関して触れたプレスリリースや報道などはありませんでした。

◆2007年7月9日 2007年版マニフェスト発表

高校無償化をすると書いてあります。しかし年齢制限についての記載はありません。

▲2008年3月18日 国公立の高等学校における教育の実質的無償化の推進及び私立の高等学校等における教育に係る負担の軽減のための高等学校等就学支援金の支給等に関する法律案(旧法案)が参議院に提出

条文には、20歳の4月1日の前日までの生徒のみが対象であることが書かれていました。しかし、同時に発表された概要やプレスリリースには年齢制限のことが書いてありません。今回の法案は可決も否決もされませんでした。

▲2009年3月25日 旧法案が参議院に提出

条文には、20歳の4月1日の前日までの生徒のみが対象であることが書かれていました。しかし、同時に発表された概要やプレスリリースには年齢制限のことが書いてありません。

▲2009年4月24日 旧法案が参議院で可決

民主党、国民新党、共産党、社民党、糸数慶子、田中直紀、川田龍平の各氏が賛成、自民党、公明党、改革クラブが反対しました。ねじれ国会だったため、衆議院では可決も否決もされずに立ち消えになりました。

◆2009年7月27日 2009年版マニフェスト発表

高校無償化をすると書いてあります。しかし年齢制限についての記載はありません。

●2009年9月 政権交代

高校無償化についても、民主党躍進の原動力となりました。

▲2010年1月29日 公立高等学校に係る授業料の不徴収及び高等学校等就学支援金の支給に関する法律案(新法案)提出

年齢制限が消えています。

▲2010年3月 新法案が衆議院と参議院で可決

民主党、国民新党、公明党、共産党、社民党、糸数慶子、松田岩夫の各氏が賛成、自民党、改革クラブ、川田龍平、長谷川大紋の各氏が反対しました。これで法律が成立しました。

まとめ

■このように、長期間、公開されている情報があるのに、マスメディア、議員の誰一人問題提起しないというのは、にわかには信じられないことでしょう。しかしこれが日本の現実です。「マニフェストと法案が全く違う」ということが現実にあり、その党が政権をとってしまうというのは有権者の判断能力の危うさを示しています。だからこそ、長年自民党が第一党でいられたのだと思いますが…… また、なぜ民主党と対立する党はこれを批判材料にしないのでしょうか。理由を知りたいものです。

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